K75thunderbirdのブログ

どちらかというと自分の頭の整理用です。ネタとしてはモバイル、自動車、ロードバイク、電気関係やPC関係の突っ込んだ話題、ややデバイスやコンポーネント寄りの偏った内容になると思われます。

EVと、各種バッテリーの正しい使い方

次期リーフはバッテリーが倍増して48kWhとか60kWhになるらしい。
何かのキーワードで情報検索していたときに、そのような話を見かけた。
たまに90kWhという文字もあったが、あれはバッテリーからの出力が90kWという資料を見間違えただけだろう。

ともあれ、バッテリー容量は大きければ大きいほど良い。
それは、長距離走れるからとか、充電の手間が減るから、という短期的な見方によるものではなく、バッテリーの負荷軽減につながるため寿命そのものを伸ばすことになるからだ。

一応説明しておくと、ある負荷装置があるとして、その装置に一定の電力を流す場合、容量の小さいバッテリーよりも容量の大きいバッテリーの方が、バッテリーが持っている電力量に対する放電電力の比率が小さいため、バッテリーへの負担が少ないということ。
もう少し具体的に言えば、100Wの負荷に対して、100Whのバッテリーを接続した場合、放電は1Cとなる。
しかし500Whのバッテリーを接続した場合、放電は0.2Cとなる。
1Cより0.2Cの方がバッテリーへのダメージは少ない、ということだ。

さらに、急速放電の度合いが低いほど、バッテリーの発熱も少ない。
全体で発生する熱量は等しいかもしれないが、温度上昇の度合いは低いので、温度的な意味でもバッテリーには優しいことになる。

同じことは充電する時にも当てはまる。
10kWhのバッテリーに20kWの充電器を使うと、2Cでの急速充電になる。
しかし40kWhのバッテリーであれば0.5Cの充電となり、バッテリーへの負担は少なくて済む。
もの凄く大雑把な計算なので、その辺のツッコミは勘弁してほしい。

必ずしも急速充電が悪いわけではなく、設計上の想定内で推奨される環境下での使用であれば問題はないものの、充電電流は極端に大電流でない方がいいのは明らかだし、温度も低すぎたり高すぎたりしてはいけない。
細かい話は、リチウムイオンバッテリーの種類によっても変わってくるので、また気が向いたら情報を集めることにしたいが、基本的な原則は変わらない。
バッテリーが無理なく動作できる範囲で、無理なく使ってやること。これが長持ちさせるカギになる。

 

話をEV以外に向けよう。
現在使われているバッテリーには様々な種類がある。
鉛蓄電池、ニッケルカドミウム、ニッケル水素、リチウムイオン、あたりが一般的だろうか。
それぞれ、適した使い方というのは異なるので、以前の常識が新しいバッテリーに通用することはない。
それを勘違いして「xxした方が良い」と最初から決めつけて、昔からの習慣に倣って使ってしまうと、寿命を縮めかねない。
自分の身の回りでも、意外と知らない人が多い(というよりも気にしていない人が多い)ので、メモがてらまとめてみようと思う。

 

鉛蓄電池
名前のとおり鉛を使用しているので、非常に重たいバッテリーである。
しかも古くから使われている。
では時代遅れなのか?というと、用途によってはそうでもなかったりする。

重量を気にしなければ、大容量のバッテリーを製造しやすい。
そのわりには安価である。
充電制御が比較的簡単である。
容量が大きいので、相対的に大電流を流すことも一応可能。
そのような特徴を生かして、自動車のバッテリーやUPSに使用されている。

長持ちさせるコツは?
保存するときは満充電にしておくことだ。
使ったら必ず充電する。充電した記憶が怪しかったらとりあえず充電する。
とりあえず満充電にしておけば問題なし。
非常にわかりやすいバッテリーである。

逆に、放電した状態で放置してしまうと電極表面に硫酸鉛が付着してしまい、内部抵抗が増大して出力可能な電流量が低下し、あっという間に寿命を迎える。
バッテリーあがりを起こした時、バッテリーが完全に復活しないのは、これが原因である。
詳しいことを知りたければ「サルフェーション」で検索してほしい。

 

ニッケルカドミウム
このバッテリーについて回る言葉。それが「メモリー効果」である。
憎きバッテリーの敵である。
これの対策は、使いかけの状態で充電すると徐々に本来の容量を使い切れなくなってしまうので、しっかり放電させてからしっかり充電すること。
今でもこの使い方が染みついている人は多いはず。

長持ちさせるコツは、上に書いたとおり。
保存時は、1.0Vあたりまで放電させてから保管。満充電での保管はNG、だそうだ。

 

ニッケル水素
ニッカドの後釜的存在。
モリー効果からは多少解放されたものの、自己放電は増加。
過放電により一気に寿命を迎えるケースがあるため、保存時は満充電した状態にしておくことが望ましい。
なお、エネループはメモリー効果や自己放電についての特性を改善しているが、満充電での保存が推奨されている点は変わりない。

 

リチウムイオン
現在一般に使用されているバッテリーの中で、最も重量あたりの電力密度が高いバッテリーである。
ただし、充電制御に失敗すると発火する。
製造を少しミスっても発火する。
便利だが危険なバッテリーである。
それゆえ、セル単体で使用されることは皆無に等しく、制御回路とセットにして販売・使用されることがほとんどである。
セル単体だと思っても、実際には小さな回路を挟んでいたりする。

長持ちさせるための使用法、それは 満充電しない&過放電しない である。
もっと具体的に言えば、残量20~80%くらいの間で使用すること。
これはバッテリーの開発者やEVの開発者、さらにはノートPCの開発者までもが口を揃えて言っていることである。

では保存はどうするか。
これも使い方と同様に、中途半端な充電状態で保存するのがベストである。
自己放電で電圧降下することを考えれば、残量70%くらいで放置しておくのがよいと思われる。

 

まとめると、鉛蓄電池は使ったらひたすら充電。満充電が正義。過放電は死亡フラグ
ニッカドは使い切ってから充電。メモリー効果に注意。ただし保管時は使い切った状態で寝かせる。
ニッケル水素はメモリー効果についてはニッカドよりルーズな管理で問題なし。保管時は満充電で。自己放電が多く過放電は死亡フラグ
リチウムイオンは充電のしすぎと放電のしすぎに注意。中途半端が正義。過放電は即死の可能性あり。

言い忘れたが、どのバッテリーも過充電と過放電がNGなのは共通認識だ。
過充電は発火、過放電は即死、というケースが多いが、そうなった場合の許容度はバッテリーによって異なるので、バッテリーに応じてしっかり考えて使ってほしい。
とはいえ、充電器を介して普通に充電し、正常に動作している機器で使用する分には全く問題ないはずだ。

問題があるとすれば過放電だ。
内部抵抗に起因する自己放電は不可避なので、放置しておけば必ず放電が進む。メンテナンスを怠れば過放電となる。
過放電は即死となるケースが多いのは前述のとおりなので、定期的なメンテナンス(充電)は欠かさないようにしたい。

 

それでは皆さん、ごきげんよう

RX100M5のイメージセンサーに積層されたDRAM容量を探る

前略
HFR撮影の記録時間=積層されたDRAMの容量限界 と考えて、どれくらいの容量が撮像素子に存在しているのか探ってみる。

画質優先と時間優先で、それぞれ解像度と撮影可能秒数が異なる。
詳細はメーカーページを参照のこと。

バッファされるデーターはRAW相当だと考え、速度優先なので読み出し8bitだと仮定して、単純計算。
そうすると、公称値の撮影可能時間が大雑把すぎるので計算結果にブレが出るものの、計算上は12Gbit~14GbitクラスのDRAMが存在することになる。

現在、最先端のDRAMチップ(ただし3Dトランジスタではないプレーナ型)の情報を集めてみると、16年末あたりで20nm(主流は8Gbitチップ)、17年中に18nm(容量変わらず)、といったところ。
ちなみに16Gbitチップが主流になるには、プロセスルールにして12nmくらいまで世代が進まないと難しいとのことで、早くても18年か、遅ければ20年といったところ。
容量増加が異様に遅いのは、プロセスの微細化が極端に難しくなっていることに端を発しているので、早急に解決することはありません。

閑話休題
メインストリームになるDRAMチップは1チップ50~80mm2と言われている。
計算上は2015年で8Gbitチップが70mm2、2016年で60mm2くらいなので、現在は50台に乗っているはずだ。
そのため、最新のプロセスで製造した場合、現状は大雑把に言って1Gbit=7mm2くらいだと考えられる。
SONYCMOSイメージセンサー製造ラインがどれくらいのプロセスルールを使用しているかは不明だが、最新鋭のDRAM製造ラインよりは多少世代が落ちると考えて間違いはないはず。
となると、84mm2~98mm2より大きいサイズ、100mm2は超えてくるくらいでなければ計算が合わないことになる。

ここで撮像素子のサイズを見ると、13.2mmx8.8mmなので116.16mm2になる。
ただし半導体のダイは撮像範囲より大きいので、仮に四方に1㎜ずつ余白があるとすれば、15.2mmx10.8mmで164.16mm2になる。
積層範囲は不明、プロセスルールも不明だが、計算上は問題なさそうなので、DRAM容量については概ね計算どおりということで良いように思う。
あとは撮影時のフレーム数をカウントすれば、正確に容量が算出できそうです。

 

 

それでは皆さん、ごきげんよう

RX100M5のS-log撮影とグレーディング

初代RX100を手放してM5にしました。
で、動画をS-log撮影できるところに興味を持った結果・・・

動画のビット数どうなってたっけ?
グレーディングってなんぞ?
ルックアップテーブル?
カラコレ?
422とか420って何がどうなってたっけ?
カラーモードって色域?
・・・などと、知りたいことや確認したいことが降って湧いたので、一度整理しておこうかと。

脳内整理用のメモです。

 

M5はXAVCSで撮影可能。
ところでAVCHDとXAVCとXAVCSって何が違うのか。

AVCHD(拡張規格とかは十把一絡げで含む)
 28Mbpsまで
 1080 60pまで
 H.264

XAVC
 2012年、F55と同時に発表
 300Mbpsまで(規格上は960Mbps)
 4k 60pまで
 422対応 8bit、10bit、12bit(規格上は444対応)
 IntraとLongGOP対応
 ラッパーはMXF
 H.264

XAVCS
 2013年発表
 100Mbpsまで
 4k 60pまで
 420まで 8bit
 ラッパーはMP4
 H.264

ちなみに、MPEG4 AVC / H.264 って書かれているのを見て、今までずっとAVCと264は選択制の別々のコーデックなのかと思いましたが、同義ってことで良いみたいです。
表記が紛らわしいと思うのは自分だけでしょうかね。

チャンネル4Kの納品フォーマットは、XAVC 3840x2160 59.94p 600Mbps らしい。

動画編集、安かったのでVegas持ってるんですが、どうも「VisionColor」の「LUT Plugin for Sony Vegas」っていうプラグインを入れればグレーディング用のLUT読めるらしいです。
カラーグレーディング、昔はカラーコレクションと呼ばれていたものですが、一応意味的には同義らしい。
厳密には多少違うような話もありますが、気にするほどではないかも。

ちなみに、DaVinici Resolveは無償ダウンロード可能らしい。4K編集、カラーグレーディングにまで対応しているので、とりあえず入手しておいて損はなさそうです。

あと、LUT(ルックアップテーブル)は、Log記録された動画を正常に見えるように補正するためのカーブ(ガンマ)、という認識でよさそう。

444はYとCbとCrが同じ解像度
422はCbとCrの水平方向解像度が半分
420はCbとCrの水平解像度が半分になった上に、YとCb、YとCr、という組み合わせにして垂直方向の解像度も落としている
411はCbとCrの水平解像度が1/4

ということは、4kで420撮影したものを2kに縮小したら、2kの444相当になる・・・のか?
民生用では記録できるフォーマットがなさそうですが。

ちなみにXAVCのカラーモード(色域)は選択した設定がファイルに情報として残るみたいですね。
基本はBT.709のようですが、SONYのS-Gamutとか広色域のカラーモードも選べるとか。
ディスプレイがついてこないし、撮影時にそれだけの色域の情報を拾い切れているのか判断できないけど、今後のために広色域で撮影しておいて損はないのかも。

もっとも、Log記録については、現状のような8bit記録のフォーマットが主流だと、ちょっと調整するとすぐにバンディングノイズが出てしまうので、まだ実用的とは言い難いです。
プロの真似事ができる程度。
せめて10bit記録が搭載されないと、厳しいのではないかな。
そういう意味では、GH5って頑張ってますね。
Intraで422で10bitで4k30pいけますからね。
4k60pにすると8bitになって420のLongになってしまうので、フレームレートは犠牲にしないといけませんが。
60pで8bitになってしまうのは、撮像素子のCMOSの動作速度の制限かな・・・と思ったら、外部出力は60pでも422の10bitが可能みたいなので、LSIの処理能力不足ですね。
ちょっと勿体ないけど、時間が解決してくれるはず。

 

それでは皆さん、ごきげんよう

7.9インチIGZOとか、42.5インチIPSとか、5.5インチJDI製とか

秋月電子で7.9インチ液晶のキットが販売されていると聞いて、例によってスペックが気になったので調べてみました。

 

パネル型番:LQ079L1SX02
解像度:2048x1536
輝度:450cd/m2
コントラスト:1000対1
色域:NTSC比70%
リフレッシュレート:60Hz
反応速度35ms(TR+TD)
8bit駆動
2014年4月

反応速度は白黒一往復の値ですが、それにしても遅い。
14年のパネルでは、こんなものでしょうか。
色域も、NTSC比70%ということはsRGB相当ですし、精細度は高いけど他は・・・という感じがします。

もっとも、EIZOのEV3237のように「色域:sRGB」という表記であっても、実測では青と赤がわずかに広く、緑がそれなりに広い、というパネルもあるので、NTSC比70とか72%とかsRGBとか決め打ちで書いてあるようなパネルは、それは最低限クリアしている色域であって、実際にはもう少し広いものだと思っていてもいいのかもしれません。

 


次、最近発売されたLGの42.5インチ4Kモニター。

輝度:350cd/m2
コントラスト:1000対1
色域:NTSC比72%
反応速度5ms(GtoG)※8msと書かれている場合もあり
10bit駆動

こちらも例によってNTSC比72%の表示。
たぶんもう少し広いでしょう。

 


あと、JDIの第2世代IPS-NEOの5.5インチ液晶。
つまり、F-01Jに採用されているパネルです。
使っているので気になった、ということで。

JDIは個々のパネルのスペックを詳細には示していないようです。
カスタマーに応じてある程度仕様を変えているのだと思いますが。
とりあえず、第2世代のIPS-NEO液晶で調べてみると、分かる範囲でこんな感じのようです。

輝度:500cd/m2 ? ※たぶんカスタマーに合わせて変更可能と思われる
コントラスト:1500対1
色域:NTSC比96%

用途的に、8bit駆動でしょうね。
コントラストについては、もっと高精細のモデルで1500対1と表記していたので、開口率など考えると、これより悪化することはないと思われます。
色域については、F-01Jに関する記事で96%の数値が出ていたので、第2世代IPS-NEO液晶共通のスペックと考えて良さそうです。
IPS液晶にしては優秀です。

しかしNTSC比96%とか、ちょっと前では考えられない広色域です。
どうりで、いろいろと鮮やかに見えるわけだ。
一応、DCI-P3の色域をカバーしていることになっています。

 

 

さて、モバイル端末で鮮やかといえば有機ELですが、タブレット向けの8.4インチとか10.5インチの有機ELパネルがどれくらいの色域を持っているのが、もう少し調べてみました。
調べた限りで出てきたのは

・AdobeRGB比90%以上
・AdobeRGB比94%

この2つですね。
製品発表時は90%以上となっていて、実際に製品が出てからは94%という具体的な数値になったように見えます。

RGBな有機ELがAdobeRGB比90%台、かたやRGBWな有機ELがDCI比100%前後。
ほぼ同等ですよね、これ。
やはり、白画素にカラーフィルターの方式でも、巷で言われているほどには色域は狭くない気がします。

 

それでは皆さん、ごきげんよう

LGの有機EL、その2

追加情報的な。

 

2015年の第1世代パネルは、BT.709の色域に対して113%、

2016年の第2世代パネルは、BT.709の色域に対して130%とのこと。

 

現状、テレビ向けのパネルが目指すのはAdobeRGBでもなくNTSCでもなく、とりあえずDCI-P3とかBT.2020のはずですが、DCI-P3はBT.709に対して135%程度の式域を持っています。

なので、非常に大雑把な計算ですが、2016年のパネルはDCI-P3に限りなく近い色域を持っているという判断でよいのではないかと思います。

実際、緑色の鮮やかさはそこそこ目を見張るものがあるので、間違いではなさそう。

 

ということで、UHDのBDで映画を再生するのであれば、とりあえず十分な色数を堪能できるということになるんじゃないですかね。

ソースが映画じゃなくてビデオとかだったら色域が足りないかもですが。

 

そんなわけで、メモでした。

皆さん、ごきげんよう

LGの有機ELのスペックとか、使ってみた感想とか。

現在、テレビ向けの大型有機ELパネルを生産しているのは、ご存じのとおりLGのみとなっていますが、このパネルが年々どのようなスペックに変化しているのか調べてみたのである程度まとめておきます。
といっても、仕様書レベルのようなものはデーターとして出てこないので、世の中に出回っている情報をまとめてみたというレベルではありますが。

◆2015年
輝度450nit
色域はDCI-P3に対して90%程度

◆2016年
輝度800nit(余裕を見て駆動して700nit)
色域はDCI-P3に対して100%程度

◆2017年
輝度1000nit
色域は改良されているようだが不明


パナソニックが欧州で有機ELテレビを展開し始めたのが2015年のパネル。
このパネルは大幅な発展途上のもので、サンプルと製品版で発光の安定度などが明らかに違うなど、かなり頑張って開発している最中であることが伺えた時期のもの。

国内各社が有機ELテレビに使用しているのが2016年のパネル。
輝度がHDRの基準を満たすまでに向上し、色域も多少拡大され、発光の安定性も満足できるレベルに達し、とりあえず言うことが無くなった感じです。

2017年のパネルについては、3D非対応となったため、偏光フィルムを剥いだ分だけ明るくないっているのでは?という話もありますが、それだと2016年の3D非対応パネルと同等ということになってしまいます。
LGのコメントとしては、輝度25%アップとなっているので、一応パネルの基礎レベルでの何らかの改良は加わっていると思いますが。

改良の方向性としては、生産性(良品率)の向上と、輝度の向上、色域の拡大、この3つが当面の目標となるのは間違いないでしょう。
ただ、輝度と色域は相いれないものなので、どちらを優先するか?というのは悩みどころかと。
出光が生産しているという有機EL素材の革新的な変化があれば、あるいは両立できるかもしれませんが。


ちなみに、2016年パネルを使用してみて思ったのは、RGBの表現に不満はそれほどないものの、CMYの表現は少々苦手かもしれない、です。
特に輝度が上がったとき、パネルがRGBWであって白画素で輝度を稼いでいるので、たとえば黄色が白っぽくなります。
液晶と見比べていると、明るい炎がオレンジっぽい感じにならずに白っぽく見えることがあり、その辺はRGBCMYのカラーテーブルを調整してみるといいのかもしれないですね。
何となく、CMYのガンマ(表現が適切かは分かりませんが)が浮いている感じがします。もう少しガンマカーブを落としてやれば・・・という印象です。
もっとも、色域の設定が適切かどうかという話もあるので、その辺はきちんと調べてみる必要はありそうですが。

ちなみにRGBWという話が出たので思い出しましたが、サムスンや日本メーカーが挑戦していたパネルはカラーフィルターを使用せずにRGBを直接発光させる有機EL方式でしたね。
で、サムスンの最近のスマホタブレットでの色域は、表立ってはカタログに載ってきませんが、インタビューなどの情報を見てみるとAdobeRGBの90%くらいをカバーしているようです。
AdobeRGBとDCI-P3、RGBの座標は少しずつ違うので一概に比較できませんが、三角形の面積としてはどちらも同じくらいです。
その基準値に対してのカバー率として、90%や100%といった値が出ているということは、RGB方式もRGBW方式も、どちらも似たような色域のレベルには到達しているのでは?と考えて良い気がします。一般にはRGB方式の方が発色が良いとされていますけどね。
ものすごく大雑把な話なので、まぁ参考程度に。

 

それでは皆さん、ごきげんよう

 

色空間とか色域とかカラースペースとか、そういうお話

少し前まではNTSCとsRGBとAdobeRGBくらいしか規格がなかった(知らなかった)色域の規格ですが、テレビがハイビジョン化して4Kになって・・・という中で、幾つか新しい単語が出てくるようになったので調べてみました。備忘録代わりにまとめておきます。

まずは比較的昔から存在する規格について改めて確認。


NTSC(BT.601)
古のブラウン管時代の色域の規格です。
これって走査線数525本で60フィールド/秒のインターレス動画のあの規格じゃなくて? と思った方。
あなたは正しい。
ドロップフレームどうした? とツッコミを入れる方。
今回は関係ないので細かいことは省略します。
調べてみると、このNTSCという単語自体はアメリカのテレビ関係の標準化委員会の略称です。
その委員会が策定したコンポジット映像信号のことをNTSCと呼び、その時に想定されていた色域のこともNTSCと呼んでいる・・・らしい。
画面輝度は定められていないようですが、テレビ放送の標準であれば100cd/m2、白色点はC光源(6774K)、ガンマはおそらく2.2です。
なお、日本では白色点に9300Kを適用しているため、青っぽい派手なカラーバランスになっています。

余談ですが、BT.601のBTというのはテレビ放送用の国際規格の意で、数値は何番目の規格であるかを示しているとのこと。
また、wikiを見ると規格制定の過程や計算式が出てきて非常に興味深いです。
インターレスの縦方向の実効解像度は0.7掛けするけど、最近のLCDなどの表示装置ではその辺の計算が異なる話などが出てきて、時間を作って上から下までゆっくり読んでみたいところです。


sRGB
テレビではなくPCにおいて、ディスプレイやプリンターやデジカメなどで入出力時の色の差異を低減するために作成された国際標準規格。
これを定めたのは国際電気標準会議(ICE)。
NTSC比72%の色域をもつ。
つまり、NTSCの方が色域が広い。
ちなみに画面輝度80cd/m2、白色点D65、ガンマは2.2です。

ふと思い出したのが、Nikonデジタル一眼レフカメラ(D1)は、カラースペースがNTSCだったこと。
sRGBの狭い色域を嫌ったのと、プロ向けの道具なのでコンシューマに配慮する必要がないと判断した結果の選択だと思いますが、今となっては少し違和感があります。


AdobeRGB
皆さんご存知のAdobeが提唱した規格です。
色域はsRGBよりも格段に広く、特に緑方向へ広がっています。
NTSCと比較すると、緑方向は同一で、青と赤に多少の差異がある感じになります。
sRGBと比較すると、青と赤が同一で、緑が拡大されています。
画面輝度160cd/m2、白色点D65、ガンマは2.2です。

ちなみに先ほどから使用しているNTSC比x%という表現、実は2種類の書き方があります。
それは「xx比x%」と「xxカバー率x%」の2つ。
比というのは、表示できる色を平面上にプロットした場合、その面積がどれくらい違うかという面積比です。
それに対してカバー率というのは、文字通り対象の規格の何%を再現できるか、ということです。
カタログスペックでは100%を超えていても、それが「比」であれば再現できない色が存在し得るわけで、数値だけで判断するのは禁物です。


BT.709
BTなのでテレビ放送向けですが、中身はsRGBです。
名前は目新しいですが、色域はそれほど広くありません。というか、今となっては狭いです。
現行のBDやHDTVは、規格としてこの色域をサポートしています。

色域と白色点はsRGBと同じですが、ガンマについては少しばかりの差異が。
そもそも、規格制定当初の勧告書では、ガンマは1.9相当に定められていました。
しかし、Adobe社のカラープロファイルでは、なぜかガンマは2.2(sRGBやAdobeRGBと同じ)になっています。
しかし、放送業界で使用されているマスターモニターはガンマ2.4がスタンダードであるため、BT.709にガンマ2.4をかけて扱うのがデファクトスタンダードとなっているようです。

とはいえ、放送業界でのデファクトスタンダードが本来の規格と異なってしまっているので、その辺りを吸収したものが、BT.1886です。


BT.1886
色域と白色点はそのままに、BT.709をガンマ2.4で扱ったプロファイルです。
黒レベルが完全に0になるディスプレイには適しているとか、HDR対応のDレンジの広いディスプレイでなければ有効活用できないとか、いろいろ言われています。
真偽はともかくとして、規格の生い立ちと内容を知っていて損はないはずです。


DCI-P3
単にDCIとだけ記される場合もあるのと、P3の部分が何かしらのオプションを示している可能性もありますが、ここでは同一のものとして扱うことにします。
デジタルシネマにて使用される規格で、フィルムが持つ色域を考慮しているため、色域が非常に広いのが特徴です。
BT.709と比較して、青は同一ですが、緑と赤の領域を拡大した色域をもっています。
赤はNTSCよりも少しだけ広く、緑はNTSCやAdobeRGBよりも少し狭い、といったところです。
投影時の輝度は48cd/m2、白色点は6302K、ガンマは2.6です。
ガンマが2.2でないため、全体に暗い映像となりますが、規格上の最大輝度が低いため問題はないようです。


BT.2020
UHDBDで採用された最新の規格です。
前述のどの色域よりも広く、もはやラスボス級。
キングオブ色域。
色域の最終兵器と呼んでも過言ではありません。
DCIでさえ、BT.2020と比べれば71.7%の色域しか持っていません。

画面輝度は不明(HDR併用のため?)、白色点はD65、ガンマは不明(HDR併用のため?)です。

 

ちなみにNTSCのところで書いた、規格上は白色点C光源、日本では9300K、という話ですが、もう少し掘り下げるとこんな話のようです。
写真の世界では白色点は5000K(昼色光と思われる)が基準だが、映像作品では業務用モニターは6500K、民生用モニターは9300K、となってしまっている。
これは日本だけであり、欧米では業務用も民生用も共に6500Kに統一されている。
そのため、海外でもオンエアされる作品の場合、9300Kをターゲットとして色調整すると海外ではカラーバランスが崩れる。
この辺りが映像関係者の悩みなのだとか。
個人的にはテレビの青白い色調は好まないので、日本も6500Kで良いと思うのですがね。


というわけで、まとめ。

色域の規格では白色点とガンマが定められているものの、環境によって多少のブレがあるというのが面白いですね。
放送業界でのBT.709のガンマとか、NTSCの白色点とか。
BDを再生する時や、何かのテレビ番組を見るとき、そのブレは製作者の意図したとおりの映像を再現する邪魔になります。

例えばDCIマスターのBDを再生する場合、元が6302KのG2.6で、オーサリング時にD65のG2.4になっているはずです。
これを再生するには、ディスプレイの設定は白色点を6302KとD65のどちらにすればいいのか?
ガンマは2.4でいいのか? それとも2.2がいいのか? まさかの1.9なのか? まさか2.6ということはないだろう?
・・・という感じに、迷うところが複数出てきます。
しかし、これらを選択肢の可能性として考えておけば、もし再生映像が何となく落ち着かない時に設定を変更する指針になるはずです。
知っていて損はありませんね。

余談ですが、Panasonicのプロジェクターの設定で「DCDM規格に対応した」という表現のモードがあったのですが、あれはDCIの事を指しているのだろうと思います。
色温度6300Kと書かれていましたし。

また、そもそもなぜガンマをかける必要があるのか、という話ですが、人間の目の特性がガンマ0.4近辺なので、それを打ち消してリニアに見せる必要があるから、ということになります。
写真関係で18%グレーというものがあります。
あれは人間の目には中間グレーに見えるものです。
18%の明るさのものが50%に見えるので、ガンマは0.4近辺であり、これを打ち消すには逆方向の補正をかける必要がある。
それが、2.2や2.4といった値で示されるガンマです。
0.5を0.18にするには、0.5を2.4乗すると近似します。
2.2でないのは何故?というのはイマイチ分かりませんが、0.45で計算すれば2.2になりますし、とりあえず人間の目の特性を打ち消すための補正であることは理解できます。

ちなみに印刷物にするものはガンマ1.8くらいで表示した方が良い、というような意見も見られます。
そのためか、AdobeRGBのガンマは1.8という情報もありますが、規格とは異なるものと考えて良さそうです。
印刷したら色が薄かった、という経験がありますが、この辺も関係してくるのでしょうかね。
だとすれば印刷時にガンマを2.2ではなく2.4とか2.5くらいにして印刷すれば良いのか?とも思います。


この手のネタはキリがないので、とりあえずこの辺で。

ごきげんよう