K75thunderbirdのブログ

どちらかというと自分の頭の整理用です。ネタとしてはモバイル、自動車、ロードバイク、電気関係やPC関係の突っ込んだ話題、ややデバイスやコンポーネント寄りの偏った内容になると思われます。

PCの消費電力を計算によって確認してみる。PCというかWSみたいな何か。

SR-2という製品をご存じだろうか。
「それ知ってる!レカロ!」と手を挙げた方は残念賞。
今回は、2010年に発売されたM/Bの話。

 


何故このM/Bの話なのか。
それは、現在進行形で手元にあり、消費電力の多さから運用頻度が極端に低く、その消費電力の根拠が気になったから、だ。
使わないと勿体ないが大規模すぎて取り回しが面倒で使用頻度激減、という流れで現在に至る。

このM/Bの構成を簡単に記すと、チップセットに5520、ブリッジチップにnF200を2つ、LGA1366を2つ、DDR3が3ch、である。
ここにGeforce9600GTを組み合わせ、SSDを2台、HDDを13台、CPUは低消費電力版の6コアXeonを2つ搭載。
合わせると、12コア24スレッド、メモリが48GBにストレージが36TBとなる。
非常に快適だ。
しかし、何もしなくても約160Wを消費する。
フルロードであれば、定格2.4GHzで280W、3.0GHzで380W、エコとは無縁の暖房器具と化す。

ざっと簡単に考えてみる。
Intel製のチップセットは基本的にそれほど消費電力は多くないはずだ。
nF200は不明。
比較的最近のCPUは消費電力に関しては大人しいと思って良い。
メモリはアクセスしなければそれほど電力を消費しないはずだ。
GPUはそれなりに電力を消費する。現行の1060がアイドル時実測で9W程度なので、プロセスルール的に考えてそれよりは多く消費しているはずだ。
SSDは数W程度。
HDDは7200rpmであることが災いして、1台あたり5W以上消費しているはずなので、70W近いのではないか。

HDDの分を差し引いても、アイドル時に90W程度の消費電力がある。
電源でもロスがあるはずだ。
さて、そう考えていったとき、計算は合うだろうか。

もう少し正確に求めてみよう。

 

 

一番怪しく不確定要素なのは、nF200である。
nF200について調べたところ、NVIDIAの780iチップセットで使用されていることが分かった。
780iは680iと同じMCP55系(C55)を採用、OCして駆動、スイッチチップとしてnF200を採用、という構成だ。
よって、780iチップセットについて調べれば何か判明するのでは?と考えた。

M/Bのみ交換し、他は同等の構成でテストした結果があった。
X38のアイドル時 52-68W(ave64W)
nForce780iのアイドル時 114-125W(ave119W)
平均値で比較して、フルロード時46W、アイドル時55Wの差。

別のベンチテストでは、アイドル時、X38が168W、780iが214W、差は46W。
よって、X38との比較では、消費電力は50W程度増加すると断定して問題はない。

X38の情報を調べると、製造は90nm、TDPは26.5W とある。
つまり、780iのTDPは70~80W程度と算出できる。
間を取って75Wと仮定する。

さて、この75Wの何割かはnF200が担っている。
さほど大きくないヒートシンクとはいえ、ファンつきのクーラーを使用しているので、1桁ではない。
仮定するとすれば10W以上、20Wまでは届かない、といったところだと思われるので、15Wと仮定する。
2つ搭載すれば30Wである。

上記より、SR-2の主要構成チップ 5520+nF200+ICH10R の消費電力(TDP)は 27.1+30+4.5=61.6 となる。
M/B上の他のチップも含めて、M/BのTDPは65W程度と見積もることができる。


他のコンポーネントの消費電力も計算しよう。

7200rpmのHDDは、調べたところアイドル時で5.6Wとのこと。
13台搭載すれば72.8W

電源効率は80+程度の750W電源なので、82%と仮定。

GPUは、ローからミドルレンジ程度の構成であれば、アイドルで10Wを少し切る程度に収まっているという情報が2009年に確認できたので、10Wという値を採用。


さて、アイドル時に160W消費していたPCは計算上成り立つのか。

まず、電源のロスを除外。
160*0.82=131.2

HDD分を除外。
131.2-72.8=58.4

GPU分を除外。
58.4-10=48.4

この48.4Wが、CPUとメモリとSSDとM/B分の消費電力となる。

アイドル時、DRAMの消費電力はほぼ0に近い(FB-DIMMなどを除く)という実験結果があった。
しかしDRAMのセルフリフレッシュは8GBでも3ケタmWくらいは消費しているという説明資料があったので、メモリの消費電力は1Wとする。
したがって、48.4-1=47.4
余談だが、メモリの枚数を増やすとアクセス時の消費電力が上がるのはコントローラーのチャンネル数が増えたから。
メモリをOCするとアイドル時の消費電力が目に見えて上がるのは、メモリコントローラーの動作クロックが上がったから。
幾つかのサイトで、目の前の事象だけに注目して短絡的に誤った結論に至っているものがあった。
いとをかし(違

閑話休題
CPUのアイドル時の消費電力だが、Ivy BridgeのC7ステートの消費電力は最大で2.2Wとなっている。
世代的に近いので、4コア2.2Wという値を参考値とすると、12コアで6.6Wとなる。
Xeonは他にもロジックの規模が大きくなっているので、8W程度と考えておけば良いだろう。
したがって、47.4-8=39.4

SSDはどうか。
使用しているSSDはアイドル時に100mWを下回るようなので、2台で0.2Wとする。
したがって、39.4-0.2=39.2

さて、M/BのTDPは計算上65Wだった。
それがアイドル時は計算上では39.2W。
悪くない結果、納得できる範囲かと思う。

 

 

参考メモ
Intel(R) 5520 I/O Hub
 65nm
 TDP 27.1W

ICH10R
 TDP 4.5W

Intel(R) X99 Chipset Product Specifications
 32nm
 TDP 6.5W

B75
 65nm
 TDP 6.7W

H87
 TDP 4.1W

 

 

それでは皆さん、ごきげんよう