K75thunderbirdのブログ

どちらかというと自分の頭の整理用です。ネタとしてはモバイル、自動車、ロードバイク、電気関係やPC関係の突っ込んだ話題、ややデバイスやコンポーネント寄りの偏った内容になると思われます。

PC内配線・コネクター・スロットの許容電流を知る

何故かPCに5枚も6枚もGPUが刺さっている方々向けの考察情報。
物理的に無理なのでは?という至極当然の疑問を抱いた方にとっては、残念ながら役に立たないと思われるのでウィンドウを閉じていただいて構わない。

 

PCを動かしているものは電気である。
大電力を要求される場合、電圧は一定であるので必然的に電流が増える。
しかし電流は無制限に流せるわけではなく、配線抵抗と接点抵抗によってある程度の制限を受ける。

配線抵抗の最たるものが配線の断面積によって定められる電流の定格値。
接点抵抗は、その名のとおりコネクタなどの接点に発生する抵抗であり、コネクタの設計電流が基準となる。

ここ数年のプラグイン電源は接点抵抗を増加させるので、その点では電源効率の改善に逆行するものと言える。
しかし、電源容量の増加により電源から取り出される配線本数が増加しているため、必要悪なのだと解釈している。

 

さて、配線抵抗については、少し調べれば断面積と電流の関係について一覧表が見つかると思うので割愛する。
PCの電源から出ている太さであれば、±2本1組で、10Aも流せれば御の字だと考えておけば良いはずだ。

問題は、様々な形状のコネクタがどれくらいの電流に耐えるよう設計されているのか、という点だ。

 M/B用のEPS24pin
 EPS12V8pin
 ペリフェラル4pin
 SATA用15pin
 GPU用6pin、8pin

挙げてみると、現在使われているのはこれくらいだろうか。
Pentium4世代にも12V4pinが存在したが、今は廃れてしまったので無視しよう。

 

M/B用のEPS24pin、その昔はATX20pinだったコネクタ。
ピンアサインを見てみると、ほとんどが3.3Vや5Vに割り当てられており、+12Vの供給は20pin中1本しかない。
24pinでも+12Vは2本しかない。
なるほど、CPU用に12Vを別途供給する必要がある理由がよく分かる。

20pinへの追加4pin部分について、許容電流は5Aであるとの情報を得た。
コネクタの形状が同一であるので、24pin全体において、12Vの許容電流は2本で10Aであると考えて良いだろう。
つまりEPS24pinの12Vについての供給電力は120W。


昨今、CPUの電力供給は12Vラインからの生成であると聞く。
また、PCIeの電力供給も12Vが主であり、他の電圧は必要最小限であるとも聞く。
PCIe形式のSSDで12Vからレギュレーターを介して給電することで安定化を図った、というものもあるくらいだ。
そのような12Vの位置づけを見ると、たった120Wでは心許ない。
CPUだけで使い切ってしまい、GPUまで電力供給できないのは非常に問題である。

ということでEPS12V8pinの必要性が明確となった。
±4組なので、20Aと考えて良いだろう。つまり240W。
24pinの120Wと合せて、360Wが確保できる。
これならば、問題はないだろう。


GPUの話が出たところで補足しておくと、GPU向けに設計されているx16形状のスロットは75Wまでの電力供給を想定している。
GPU向けのx1スロットは25Wとのこと。
また、GPU向けではない通常のx16、x8、x4スロットは25W、x1スロットは10Wである。
なお、12V以外の電圧についてどの程度含まれているかは確認できていないのでご容赦いただきたい。


話を戻して、次はペリフェラル4pinである。
これは規格が古いこともあり、明確な許容電流は不明確と言わざるを得ない。
ただ、5Aという説と、9.4~11Aという具体的な値が確認できたことは、一つの材料になるだろう。

5Aという説はどうだろうか。
以前使用していたSR2では、M/B付属の変換コネクタに、ペリフェラルx2⇒EPS8pin というものがあった。
上述のとおり、EPS8pinは20Aと予想される。
この場合、ペリフェラル1つで10Aとなり、5A説は少々考えづらい。
コネクタもATXやEPSのものより接点方向に奥行きがあるので、5Aより多くても不思議ではない。
よって、10A前後と考えるのが自然だと思われる。


SATA用15pinはどうだろうか。
これは3.3Vと5Vと12Vの3系統を15pinで繋いでいるものだ。
1pinあたり1.5Aで、各系統3本使っていて4.5Aである、という情報があるが、恐らく正しいだろう。
構造を見ても、EPSやペリフェラルのような電流は流せないと考えるのが自然だ。


GPU用の6pinや8pinだが、これは明確な定格値が知られている。
75Wと150Wだ。
なぜ2pin増えただけで倍なのか?という疑問もあるが、それ以上に疑問なのは8pinのピンアサインである。
6pinは±3組なのだが、8pinは+を3本のまま、GNDを5本にしているのだ。

一応、ATXやEPSと同系統のコネクタなので、1本あたりの許容電流は5Aだろう。
3本で15A、これで計算上は180Wとなる。
よって、+が3本しかないとしても、一応150Wという定格値は余裕を持った設定だと考えられる。
GNDの方が重要視されていることや、必要以上にマージンを取っていることは、GPUの動作安定性に繋がる何か裏付けがあってのことだろう。
あるいは、PCIeスロットによって供給電力が75Wの場合と25Wの場合があるので、この50Wを吸収する目的があるのかもしれない。
また、コネクタは全体的にGNDの数が少ないので、バランスをとるための設計かもしれない。

 

余談だが、ペリフェラル4pinからGPU用の6pinに変換するアダプターは、ここまで考察した事が正しければペリフェラル4pinは1つで足りるはずだ。
しかし、一般に出回っているアダプターは2つのコネクタを備えている。
やはりペリフェラルは5Aか?と不安になるが、これはpin数の違いを吸収することと安全性の向上の2つを両立するための選択ではなかろうか。
つまり、ペリフェラル4pinは12VとGNDとGNDの3pinを使用できる。
これを12V3つとGND3つにしなければならないので、どうせ線の数を増やすのであれば2つ目のコネクタを付けよう、という考えだ。

 

ここまでの情報を覚えておけば、GPUを複数枚使用する時の電力供給について誤った選択をすることはないだろう。
ライザーカードにSATAで給電するのは、ライザーのPCIeがGPU向けの設計だとすれば過電流(コネクタ54Wに対して要求75W)だと判断できる。
しかし一般的なPCIeであれば適正電流(コネクタ54Wに対して要求25W)だと判断できる。
恐らく、過電流による発熱や発火の事例を確認する限りは、GPU向けの75Wを想定しておいた方が無難であろう。
よって、SATAコネクタから給電するのは、よほど非常事態でもなければ行わない方が良いと結論できる。
ちなみに、ペリフェラル4pinであれば、どちらのパターンでも適正電流だろう。
GPU用の6pinも同様だ。


また、SATAペリフェラルのように1系統の配線に複数コネクタが存在する場合、1系統の許容電流は10A程度であろうと想像しているが、ライザーカードを2枚接続した場合は12.5A流れる計算になる。
この時点でマージンまで使い切ってギリギリだと考えられる。
よって、1系統の配線に3つ以上のライザーを接続した結果は容易に想像できるだろう。

 

以上、安全なPCの運用に役立てれば幸いだ。
それでは皆さん、ごきげんよう