K75thunderbirdのブログ

どちらかというと自分の頭の整理用です。ネタとしてはモバイル、自動車、ロードバイク、電気関係やPC関係の突っ込んだ話題、ややデバイスやコンポーネント寄りの偏った内容になると思われます。

なぜ、IMAXは凄いのか。

物理的な重厚長大は、ロマンである。
最終的には、この一言に尽きる。

 

何の話かというと、映画だ。
撮影機材、フィルム規格、そういった話だ。

 

順を追って説明しよう。

 

映画というのは、大半が35mmフィルムで撮影されている。
いや、「されていた」と過去形にした方が正しい。
今では撮影の大半はデジタル化され、上映もデジタルで行われている。
16mmフィルムの存在や、フィルムサイズとは関係ないサイズの撮像素子の登場については、今回は触れないことにする。

そもそも、35mmフィルム時代、フィルム1コマのサイズはどれくらいだったのだろうか。
まずはそこから情報を整理してみたい。
※ 面倒なので光学音声トラックは省略

写真では35mmフィルムを横方向に、8パーフォレーション分使い、横36mm、縦24mm、というサイズを使用する。
映画では35mmフィルムを縦方向に、4パーフォレーション分使い、横24mm、縦18mm、というサイズが基本となる。
写真で言うところのハーフサイズだ。
アスペクト比は4:3であり、映画ではこれがスタンダードサイズとなる。

ビスタサイズと呼ばれるのは、アスペクト比おおよそ16:9であり、縦を18㎜から14mmに縮めた規格である。
とはいえ、4パーフォレーションであることは変わらないので、上下に黒帯が存在する。

しかし、せっかくのフィルムに使わない場所があるのは勿体ない。
アスペクトを優先した結果情報量が削られてしまうのはいかがなものか。
そう考えたのか、より横長の規格としてシネマスコープでは、スタンダードサイズに横方向を圧縮した映像を記録し、上映時に伸張する方式を採用した。
これにより、2.35:1というアスペクト比を実現した。

 

映画の歴史は横長への歴史だと(勝手に)思っているが、横長にするのも限度がある。
誰も、ヘルメットの隙間から見るような視界を求めているわけではないのだ。
欲しいのは臨場感。
そのためには、さらなる情報量。
さらに上を目指して生まれたのが70㎜フィルムだ。

しかもIMAXではフィルムを縦に使うのではない。
横に走らせる。
アスペクト比こそ平凡だが、1コマで15パーフォレーションも使う。
結果、横70.41mm、縦52.63mm、という広大な面積を確保している。
面積比で言えば、35㎜フィルムの8.58倍である。

 

35㎜フィルムを写真で使った場合、感度400のネガフィルムで800万画素程度だということを、過去に個人的な実験で確認した記憶がある。
室内で、十分な光量を用意して、スローでもハイスピードでもないSSで、絞りは開放より少し絞り込んで、画面中央付近で解像度チャートを撮影した結果だったはずだ。
もちろんレンズや光源によって変動はあるだろうし、低感度になればもっと値は上がるだろう。
ただ、映画撮影で極端に低感度なフィルムは使用できないとすれば、映画なら35㎜フィルムで400万画素程度だと考えるのは妥当だと言える。
とすると、IMAXは3500万画素程度は見込めることになり、条件次第ではそれが7000万や1億くらいになってもおかしくない。
これは圧倒的な画質と言える。

余談だが、アナログで物理的に圧倒するやり方は、DVDが出てくる前のLDを彷彿とさせる。
1回転で1フレーム(走査線数525本)をアナログで記録し、30センチのアクリル製の円盤を最高で1800rpmでブン回す。
物理で殴っている好例だ。

 

話を戻そう。

35㎜フィルムに関して言えば、デジタル撮影に置き換わってきているのは承知のとおり。
だが、このIMAX(というか70㎜フィルム)についてはフィルムしか選択肢がない。
何故か。
話は簡単で、面積が大きすぎて撮像素子が製造できないからだ。

現状、製造されている撮像素子の最大サイズは、横60mm程度、縦45mm程度、のようだ。
試作品などであればもう少し大きいのもあるかもしれないが、極端な違いはないだろう。
そもそも、半導体の製造限界は800平方ミリメートル程度である。
よって、これを超えるサイズのチップを作る場合には繋ぎ合わせて作ることになる。
2分割でも足りないので、4分割くらいだろうか。相当に高度な製造技術が必要であることは間違いない。

また、仮にIMAXと同サイズの素子が製造できたとしても、フレームレートが確保できない。
前述したラージサイズの撮像素子であるが、1億5千万画素で6fpsくらいが限度。
4000万画素程度まで落とせば24fpsを実現できそうだが、ベイヤー配列であることやダイナミックレンジの事を考えると、もう少し画素数は欲しい。
とはいえ、撮像素子は大型化するほど低速化する傾向があるため、この辺は納得できる話ではある。

 

ということで、物理で殴るIMAXは強いのだ。
たとえそれがアナログであっても。
クリストファー・ノーラン監督も、その魅力にとりつかれた人の一人なのだろう。

 

長くなってきたので、上映時のデジタル化の話や、その解像度の話、撮像面積により異なるボケの大きさ、代用品の可能性、デジタルの弊害などについては、また別の時にまとめたい。

それでは皆さん、ごきげんよう