K75thunderbirdのブログ

どちらかというと自分の頭の整理用です。ネタとしてはモバイル、自動車、ロードバイク、電気関係やPC関係の突っ込んだ話題、ややデバイスやコンポーネント寄りの偏った内容になると思われます。

色空間とか色域とかカラースペースとか、そういうお話

少し前まではNTSCとsRGBとAdobeRGBくらいしか規格がなかった(知らなかった)色域の規格ですが、テレビがハイビジョン化して4Kになって・・・という中で、幾つか新しい単語が出てくるようになったので調べてみました。備忘録代わりにまとめておきます。

まずは比較的昔から存在する規格について改めて確認。


NTSC(BT.601)
古のブラウン管時代の色域の規格です。
これって走査線数525本で60フィールド/秒のインターレス動画のあの規格じゃなくて? と思った方。
あなたは正しい。
ドロップフレームどうした? とツッコミを入れる方。
今回は関係ないので細かいことは省略します。
調べてみると、このNTSCという単語自体はアメリカのテレビ関係の標準化委員会の略称です。
その委員会が策定したコンポジット映像信号のことをNTSCと呼び、その時に想定されていた色域のこともNTSCと呼んでいる・・・らしい。
画面輝度は定められていないようですが、テレビ放送の標準であれば100cd/m2、白色点はC光源(6774K)、ガンマはおそらく2.2です。
なお、日本では白色点に9300Kを適用しているため、青っぽい派手なカラーバランスになっています。

余談ですが、BT.601のBTというのはテレビ放送用の国際規格の意で、数値は何番目の規格であるかを示しているとのこと。
また、wikiを見ると規格制定の過程や計算式が出てきて非常に興味深いです。
インターレスの縦方向の実効解像度は0.7掛けするけど、最近のLCDなどの表示装置ではその辺の計算が異なる話などが出てきて、時間を作って上から下までゆっくり読んでみたいところです。


sRGB
テレビではなくPCにおいて、ディスプレイやプリンターやデジカメなどで入出力時の色の差異を低減するために作成された国際標準規格。
これを定めたのは国際電気標準会議(ICE)。
NTSC比72%の色域をもつ。
つまり、NTSCの方が色域が広い。
ちなみに画面輝度80cd/m2、白色点D65、ガンマは2.2です。

ふと思い出したのが、Nikonデジタル一眼レフカメラ(D1)は、カラースペースがNTSCだったこと。
sRGBの狭い色域を嫌ったのと、プロ向けの道具なのでコンシューマに配慮する必要がないと判断した結果の選択だと思いますが、今となっては少し違和感があります。


AdobeRGB
皆さんご存知のAdobeが提唱した規格です。
色域はsRGBよりも格段に広く、特に緑方向へ広がっています。
NTSCと比較すると、緑方向は同一で、青と赤に多少の差異がある感じになります。
sRGBと比較すると、青と赤が同一で、緑が拡大されています。
画面輝度160cd/m2、白色点D65、ガンマは2.2です。

ちなみに先ほどから使用しているNTSC比x%という表現、実は2種類の書き方があります。
それは「xx比x%」と「xxカバー率x%」の2つ。
比というのは、表示できる色を平面上にプロットした場合、その面積がどれくらい違うかという面積比です。
それに対してカバー率というのは、文字通り対象の規格の何%を再現できるか、ということです。
カタログスペックでは100%を超えていても、それが「比」であれば再現できない色が存在し得るわけで、数値だけで判断するのは禁物です。


BT.709
BTなのでテレビ放送向けですが、中身はsRGBです。
名前は目新しいですが、色域はそれほど広くありません。というか、今となっては狭いです。
現行のBDやHDTVは、規格としてこの色域をサポートしています。

色域と白色点はsRGBと同じですが、ガンマについては少しばかりの差異が。
そもそも、規格制定当初の勧告書では、ガンマは1.9相当に定められていました。
しかし、Adobe社のカラープロファイルでは、なぜかガンマは2.2(sRGBやAdobeRGBと同じ)になっています。
しかし、放送業界で使用されているマスターモニターはガンマ2.4がスタンダードであるため、BT.709にガンマ2.4をかけて扱うのがデファクトスタンダードとなっているようです。

とはいえ、放送業界でのデファクトスタンダードが本来の規格と異なってしまっているので、その辺りを吸収したものが、BT.1886です。


BT.1886
色域と白色点はそのままに、BT.709をガンマ2.4で扱ったプロファイルです。
黒レベルが完全に0になるディスプレイには適しているとか、HDR対応のDレンジの広いディスプレイでなければ有効活用できないとか、いろいろ言われています。
真偽はともかくとして、規格の生い立ちと内容を知っていて損はないはずです。


DCI-P3
単にDCIとだけ記される場合もあるのと、P3の部分が何かしらのオプションを示している可能性もありますが、ここでは同一のものとして扱うことにします。
デジタルシネマにて使用される規格で、フィルムが持つ色域を考慮しているため、色域が非常に広いのが特徴です。
BT.709と比較して、青は同一ですが、緑と赤の領域を拡大した色域をもっています。
赤はNTSCよりも少しだけ広く、緑はNTSCやAdobeRGBよりも少し狭い、といったところです。
投影時の輝度は48cd/m2、白色点は6302K、ガンマは2.6です。
ガンマが2.2でないため、全体に暗い映像となりますが、規格上の最大輝度が低いため問題はないようです。


BT.2020
UHDBDで採用された最新の規格です。
前述のどの色域よりも広く、もはやラスボス級。
キングオブ色域。
色域の最終兵器と呼んでも過言ではありません。
DCIでさえ、BT.2020と比べれば71.7%の色域しか持っていません。

画面輝度は不明(HDR併用のため?)、白色点はD65、ガンマは不明(HDR併用のため?)です。

 

ちなみにNTSCのところで書いた、規格上は白色点C光源、日本では9300K、という話ですが、もう少し掘り下げるとこんな話のようです。
写真の世界では白色点は5000K(昼色光と思われる)が基準だが、映像作品では業務用モニターは6500K、民生用モニターは9300K、となってしまっている。
これは日本だけであり、欧米では業務用も民生用も共に6500Kに統一されている。
そのため、海外でもオンエアされる作品の場合、9300Kをターゲットとして色調整すると海外ではカラーバランスが崩れる。
この辺りが映像関係者の悩みなのだとか。
個人的にはテレビの青白い色調は好まないので、日本も6500Kで良いと思うのですがね。


というわけで、まとめ。

色域の規格では白色点とガンマが定められているものの、環境によって多少のブレがあるというのが面白いですね。
放送業界でのBT.709のガンマとか、NTSCの白色点とか。
BDを再生する時や、何かのテレビ番組を見るとき、そのブレは製作者の意図したとおりの映像を再現する邪魔になります。

例えばDCIマスターのBDを再生する場合、元が6302KのG2.6で、オーサリング時にD65のG2.4になっているはずです。
これを再生するには、ディスプレイの設定は白色点を6302KとD65のどちらにすればいいのか?
ガンマは2.4でいいのか? それとも2.2がいいのか? まさかの1.9なのか? まさか2.6ということはないだろう?
・・・という感じに、迷うところが複数出てきます。
しかし、これらを選択肢の可能性として考えておけば、もし再生映像が何となく落ち着かない時に設定を変更する指針になるはずです。
知っていて損はありませんね。

余談ですが、Panasonicのプロジェクターの設定で「DCDM規格に対応した」という表現のモードがあったのですが、あれはDCIの事を指しているのだろうと思います。
色温度6300Kと書かれていましたし。

また、そもそもなぜガンマをかける必要があるのか、という話ですが、人間の目の特性がガンマ0.4近辺なので、それを打ち消してリニアに見せる必要があるから、ということになります。
写真関係で18%グレーというものがあります。
あれは人間の目には中間グレーに見えるものです。
18%の明るさのものが50%に見えるので、ガンマは0.4近辺であり、これを打ち消すには逆方向の補正をかける必要がある。
それが、2.2や2.4といった値で示されるガンマです。
0.5を0.18にするには、0.5を2.4乗すると近似します。
2.2でないのは何故?というのはイマイチ分かりませんが、0.45で計算すれば2.2になりますし、とりあえず人間の目の特性を打ち消すための補正であることは理解できます。

ちなみに印刷物にするものはガンマ1.8くらいで表示した方が良い、というような意見も見られます。
そのためか、AdobeRGBのガンマは1.8という情報もありますが、規格とは異なるものと考えて良さそうです。
印刷したら色が薄かった、という経験がありますが、この辺も関係してくるのでしょうかね。
だとすれば印刷時にガンマを2.2ではなく2.4とか2.5くらいにして印刷すれば良いのか?とも思います。


この手のネタはキリがないので、とりあえずこの辺で。

ごきげんよう