K75thunderbirdのブログ

どちらかというと自分の頭の整理用です。ネタとしてはモバイル、自動車、ロードバイク、電気関係やPC関係の突っ込んだ話題、ややデバイスやコンポーネント寄りの偏った内容になると思われます。

α7S3に搭載された撮像素子を考える

いつも通り、セミコンダクタのページには何も情報が出ていないので、公開されている情報から推測してみたい。

 

◆読み出し速度について
ローリングシャッターに関して、前世代から3倍の改善を果たした、とされている。前世代は4k30pであるので、単純に考えれば90fpsにしかならない。であれば前世代は30fpsよりはもう少し速かったはずだ。しかしローリングシャッター歪みが結構あったという話もあり、具体的な数字はあまり出ていない。初代がフルHDで24msらしいので、恐らくこれと同じくらいだろう。
3倍であれば8msとなり、これなら125fpsを実現できるので、これなら4K120fpsを実現できる。
もっとも、フォーサーズ規格のサイズであれば、このスペックを実現しているカメラは既に出ている。しかし、35㎜フルサイズで実現するには回路設計を相当頑張る必要がある。銅配線を使ったという話も出ているが、CPUの世界では0.18μmの頃から銅配線が使用されているので「何をいまさら」という感じがしないわけではない。プロセスルールだけで言えば、D800向けの撮像素子は0.18μmで製造されており、それは8年近くも前の話である。この数年の製品を解析した結果、今は大型撮像素子は65nm、小型は45nm、ロジックは28nmくらいで作っているはずである。Intelが配線にコバルトを使おうかと言っている最中に、ようやく銅になったか・・・という感じがしなくもないが、配線に求める速度などが異なる上に、銅配線はエレクトロマイグレーションを起こすはずなので、その辺の判断も必要だったのだろう。

 

◆4:2:2 10bit 120fps
GH5など、10bit記録に対応している機種はある。ただし内部記録ではfpsを上げると4:2:0になったりしている。外部出力は4:2:2を維持できるようなので、単純に本体側の演算性能が不足しているのだと判断できる。
それに対して、α7S3は120fpsでも4:2:2を維持できている。しかも10bitで。なるほど従来比で8倍の演算性能が必要になるわけだ。
なお、10bit記録ということは、読み出しbit数は最低でも10、恐らく12bitだろう。

 

◆4K 60p RAW 16bit
外部レコーダー使用時に可能とされているが、記録されるのは4264x2408なので、4Kよりは少し大きい。最終的に縮小するもよし、クロップするもよし。
個人的には、記録されるのが16bitとはいえ、撮像素子からの読み出しは16bitではなく14bitだろうと予想する。F65ですら14bit読み出しで16bit記録しているのだ。(まぁ、ARRIのカメラは16bit読み出しをしているようなので、そこは純粋に凄いと思う)
もっとも、12bitで120fps駆動しているのなら、14bitでは60fpsだろう・・・という単純な考えもあったりするが。
ちなみに、RAW記録はLogではなくリニアのはずだ。だとすると、グレーディング耐性を考えると10bitのLogより少しだけマシという感じになると思う。

 

◆常用感度の下限の引き下げ
静止画でも動画でも、下限が引き下げられている。
しかし、普通は裏面照射にすると感度は上がるもののDレンジが減少する(初期の頃は相対的にノイズも増えた)ので、低感度化とは相いれないはずだ。
そのため、今回は裏面照射化しても飽和信号量を維持できるような工夫をしているのだと想像できる。
もっとも、飽和信号量を維持したところで感度向上によるDレンジの狭化は避けられないが、元々画素ピッチが広かったので相対的に感度向上の程度は少なかった(もしくはほとんど無視できるレベルだった)のだと思われる。
ノイズレベルを低下させて相対的にDレンジを稼ぎ、色再現性向上のためにフィルター濃度を濃くして感度を低下させ、結果的に低感度設定が使えるようになったと考えるのが妥当だろうか。
中感度~高感度にて1段分のノイズ低減を謳っており、15stopのDレンジを持つということなので、飽和信号量は同等か微減、ノイズレベルは1.5段程度改善、フィルターで0.5段程度のマイナス、結果として実用域での1段の性能アップ、という感じかもしれない。
ちなみにF55とF5の感度差が2/3段くらいだったが、あれはカラーフィルターの違いだけではなく(SONYはフィルターの違いしか言及していないが)グローバルシャッターの有無もあったはずなので、それを考えれば色再現性の向上によって0.5段の差が出るというのは妥当な考えだと思われる。

 

 

あと、何となく思いついたことを書いておくが、ARRIのカメラが搭載している撮像素子と画素ピッチは似たような感じなので、開発陣はその辺(ARRIはDレンジが広い)を意識して作ったんだろうと思う。

あと、正直なところこの画素ピッチなら裏面照射にしても画質面のメリットは少ないように思えるので、速度面を優先して裏面照射構造を採用したのかもしれない。

あと、某社が8K動画撮影できるミラーレスを出したが、ローリングシャッター歪みや感度などの要素を考えると、現状ではα7S3の方が方向性としては妥当だと思う。撮影後のハンドリングの問題もあるし、十分な性能を持ったレンズも少ない。最終的には解像度を求めることになるのだろうが、今はまだ早いのかな・・・と。技術力の誇示という意味では正しいのだろうが。

あと、この撮像素子が業務用カメラにも活用されることに期待したい。グローバルシャッターを搭載してF55の後継に・・・とか、無いだろうか。そろそろスーパー35サイズをはみ出してもOKだと思うのだが。いやでもライプ撮影などで被写界深度が欲しいとなると、感度を犠牲にしても撮像素子はスーパー35サイズである必要はあるかもしれないので、その辺をどう考えるか・・・

 

・・・などなど、考え出せばキリがないので、この辺でいったん終わらせておきたいと思う。

 


それでは皆さん、ごきげんよう