K75thunderbirdのブログ

どちらかというと自分の頭の整理用です。ネタとしてはモバイル、自動車、ロードバイク、電気関係やPC関係の突っ込んだ話題、ややデバイスやコンポーネント寄りの偏った内容になると思われます。

α7S3に搭載された撮像素子を考える

いつも通り、セミコンダクタのページには何も情報が出ていないので、公開されている情報から推測してみたい。

 

◆読み出し速度について
ローリングシャッターに関して、前世代から3倍の改善を果たした、とされている。前世代は4k30pであるので、単純に考えれば90fpsにしかならない。であれば前世代は30fpsよりはもう少し速かったはずだ。しかしローリングシャッター歪みが結構あったという話もあり、具体的な数字はあまり出ていない。初代がフルHDで24msらしいので、恐らくこれと同じくらいだろう。
3倍であれば8msとなり、これなら125fpsを実現できるので、これなら4K120fpsを実現できる。
もっとも、フォーサーズ規格のサイズであれば、このスペックを実現しているカメラは既に出ている。しかし、35㎜フルサイズで実現するには回路設計を相当頑張る必要がある。銅配線を使ったという話も出ているが、CPUの世界では0.18μmの頃から銅配線が使用されているので「何をいまさら」という感じがしないわけではない。プロセスルールだけで言えば、D800向けの撮像素子は0.18μmで製造されており、それは8年近くも前の話である。この数年の製品を解析した結果、今は大型撮像素子は65nm、小型は45nm、ロジックは28nmくらいで作っているはずである。Intelが配線にコバルトを使おうかと言っている最中に、ようやく銅になったか・・・という感じがしなくもないが、配線に求める速度などが異なる上に、銅配線はエレクトロマイグレーションを起こすはずなので、その辺の判断も必要だったのだろう。

 

◆4:2:2 10bit 120fps
GH5など、10bit記録に対応している機種はある。ただし内部記録ではfpsを上げると4:2:0になったりしている。外部出力は4:2:2を維持できるようなので、単純に本体側の演算性能が不足しているのだと判断できる。
それに対して、α7S3は120fpsでも4:2:2を維持できている。しかも10bitで。なるほど従来比で8倍の演算性能が必要になるわけだ。
なお、10bit記録ということは、読み出しbit数は最低でも10、恐らく12bitだろう。

 

◆4K 60p RAW 16bit
外部レコーダー使用時に可能とされているが、記録されるのは4264x2408なので、4Kよりは少し大きい。最終的に縮小するもよし、クロップするもよし。
個人的には、記録されるのが16bitとはいえ、撮像素子からの読み出しは16bitではなく14bitだろうと予想する。F65ですら14bit読み出しで16bit記録しているのだ。(まぁ、ARRIのカメラは16bit読み出しをしているようなので、そこは純粋に凄いと思う)
もっとも、12bitで120fps駆動しているのなら、14bitでは60fpsだろう・・・という単純な考えもあったりするが。
ちなみに、RAW記録はLogではなくリニアのはずだ。だとすると、グレーディング耐性を考えると10bitのLogより少しだけマシという感じになると思う。

 

◆常用感度の下限の引き下げ
静止画でも動画でも、下限が引き下げられている。
しかし、普通は裏面照射にすると感度は上がるもののDレンジが減少する(初期の頃は相対的にノイズも増えた)ので、低感度化とは相いれないはずだ。
そのため、今回は裏面照射化しても飽和信号量を維持できるような工夫をしているのだと想像できる。
もっとも、飽和信号量を維持したところで感度向上によるDレンジの狭化は避けられないが、元々画素ピッチが広かったので相対的に感度向上の程度は少なかった(もしくはほとんど無視できるレベルだった)のだと思われる。
ノイズレベルを低下させて相対的にDレンジを稼ぎ、色再現性向上のためにフィルター濃度を濃くして感度を低下させ、結果的に低感度設定が使えるようになったと考えるのが妥当だろうか。
中感度~高感度にて1段分のノイズ低減を謳っており、15stopのDレンジを持つということなので、飽和信号量は同等か微減、ノイズレベルは1.5段程度改善、フィルターで0.5段程度のマイナス、結果として実用域での1段の性能アップ、という感じかもしれない。
ちなみにF55とF5の感度差が2/3段くらいだったが、あれはカラーフィルターの違いだけではなく(SONYはフィルターの違いしか言及していないが)グローバルシャッターの有無もあったはずなので、それを考えれば色再現性の向上によって0.5段の差が出るというのは妥当な考えだと思われる。

 

 

あと、何となく思いついたことを書いておくが、ARRIのカメラが搭載している撮像素子と画素ピッチは似たような感じなので、開発陣はその辺(ARRIはDレンジが広い)を意識して作ったんだろうと思う。

あと、正直なところこの画素ピッチなら裏面照射にしても画質面のメリットは少ないように思えるので、速度面を優先して裏面照射構造を採用したのかもしれない。

あと、某社が8K動画撮影できるミラーレスを出したが、ローリングシャッター歪みや感度などの要素を考えると、現状ではα7S3の方が方向性としては妥当だと思う。撮影後のハンドリングの問題もあるし、十分な性能を持ったレンズも少ない。最終的には解像度を求めることになるのだろうが、今はまだ早いのかな・・・と。技術力の誇示という意味では正しいのだろうが。

あと、この撮像素子が業務用カメラにも活用されることに期待したい。グローバルシャッターを搭載してF55の後継に・・・とか、無いだろうか。そろそろスーパー35サイズをはみ出してもOKだと思うのだが。いやでもライプ撮影などで被写界深度が欲しいとなると、感度を犠牲にしても撮像素子はスーパー35サイズである必要はあるかもしれないので、その辺をどう考えるか・・・

 

・・・などなど、考え出せばキリがないので、この辺でいったん終わらせておきたいと思う。

 


それでは皆さん、ごきげんよう

EDCB PT3 Setting

動作原理を正しく理解しないまま使っていたので、次回に困った時のためにメモを作っておく。

 

EpgDataCap_Bon.exe がチャンネルスキャンをする時の参照ファイルは、BonDriver内のtxtである。
ここが間違っていると、後でEPGの文字がダブったり、録画予約ができなかったり、動作不良が生じるので注意。
トランスポンダの割り振りが変更されたりした場合は、編集が必要となる。

このテキスト、
 ・BonDriverとしてのチューナー空間は BSが0 CSが1
 ・BonDriverとしてのチャンネルは 連番になるように(BS/CSは別々で良い)
 ・PTxとしてのチャンネルは トランスポンダごとに連番を割り振る
 ・TSIDは、変更されたらそれを反映させる必要がある
・・・という方針で編集すればOKのようだ。

 

txtを修正したら、EpgDataCap_Bon.exe でチャンネルスキャン。
すると、Setting内の*.ChSet4.txtが更新される。
元々の設定が間違っていると、どこかのトランスポンダが丸ごと抜けたりする。

 

その後、サービスを停止。
Setting内のEpgDataを削除。
サービスを起動。(この段階でChSet5.txtが作成されるような気がする)
EPG取得。

 

EPG取得が終われば、恐らく正常な状態になっているはず。
番組表から番組指定して予約しても赤くなるような場合は、どこかに不整合が生じているので、最初から見直すべきかと思う。

高画質化の流れ(個人的まとめ)

高画質での動画撮影に関連して、時系列に並べるとこんな感じになると思っている。
放送局御用達のような業務用規格は縁が無いので含めていない。
発表と普及にはズレがあるので、具体的な年数までは記さない。

・DVと派生規格の登場
・MPEG2のまま高解像度化を図る(この辺でIntraからLONGへ)
・記録メディアがテープやディスクからメモリへ
H.264が使われるようになる
・5Dmk2による大判センサーの一般化
・REDの勃興(フルHDからの脱却)
・REDへの各社対抗品の開発
・記録形式としてのLOGの普及
・4Kを超える6Kや8K化、高FPS化 ←今ここ

 

アナログ全盛期に登場したDV規格は画期的だった。滲まないしジッターもない。実際には4:1:1記録なので滲んでいるのだが、アナログと比べたら雲泥の差である。ただしDVminiでは60分まで(後に80分も出たが)なので、長時間収録には向かなかった。互換性が悪化するのを恐れなければ1.5倍モードも使えはしたが。
※ ラージカセットの規格もあったはずだが、結局見ないまま終わった気がする

 

その後、SD画質の枠を超えようとする製品が出てくる。1440x1080iでディスク記録というような製品が出現し、解像度の向上、記録フォーマットの脱Intraが進んだ。
しかし、ディスクは衝撃に弱い。
ディスクは容量が少ない(テープと比べれば)ので、長時間記録に向かない。
Intraフォーマットではないので圧縮率は高いが、エンコーダーの性能が各社バラバラ。

ちなみに、この辺りで解像度的な問題からCCD⇒CMOS化が進んだように思う。
また、この辺りで記録メディアの正解を求めて数年間は迷走したように感じる。
それに影響されて、デザインが微妙な感じのものが多かったようにも感じる。

 

DVカセットにMPEG2記録するHDV規格が出て「やっぱりディスクよりテープだよね」という感じになったものの、利便性と低価格化によってメモリが優勢になり、デザインもコンパクトに。
ちなみにDVだとminiカセットで60分として、容量は12GB程度である。メモリが16GB積めれば、メモリーカードで16GB挿せれば、という感じで一気に主流になった感がある。

 

そして、MPEG2でHDに対応できないわけではないが、メモリを効率的に使いたい(エンコーダーの省力化が前提)ので、H.264が台頭。それと同時にAVCHDが規格化されたものの、当初はエンコーダーによるバラつきが大きく、そもそもビットレートを絞りすぎな感もあり、各社が拡張規格として高ビットレートのモードを実装。

この後、解像度を引き上げようとすると一気に4Kとなってしまうので、撮像素子もDSPも記録メディアも追い付かない・・・ということで、民生用は一旦落ち着いたように思う。

 

しかし、並行して高画質化の別のパラメーターとしての撮像素子の大型化が進みつつあり、5Dmk2に注目が集まったり、RED ONEが登場したり、解像度以外の部分での高画質化の流れができ始めたのもこのころ。思うに、CMOS撮像素子の製造技術が進み、面積あたりのコストが下がってきたことや、ある程度の高速駆動が可能になってきたことなど、前向きな要素が重なった結果なのだろう。

ちなみに、RED ONEが出てくるまで、恐らく映像機器大手の会社は撮像素子の大型化を避けつつ高解像度化する道を模索していたのではないか。撮像素子が大型化すると、被写界深度の点で今までと同じ使い方ができなくなるうえに、そういったカメラの需要は絶対的な数量で言えば少ないからだ。
ただ、RED ONEの登場と時を同じくして5Dmk2への注目が集まり、ラージセンサー化の流れが無視できないと判断するに至ったため、急遽開発を進めることになった。だから、RED ONE登場後に対抗品を出すのに相当に時間がかかったのだと予想するのは妥当だろう。
もっとも、REDはニッチな市場だけをターゲットに製品を作っていたということもあるし、解像度が中途半端でも問題ないという割り切った考えを持っていたので早期に製品化できたということはあるだろうが。

そして、この辺りから「CMOSでもグローバルシャッターを実現したい」という話が本格化したように思う。撮像素子が大きければCMOSでも実装可能と判断したのか、撮像素子の大型化でローリングシャッター歪みが無視できないと考えるようになったか、CCDの頭打ちを意識したゆえの発想なのか、その全てなのかは不明だ。
しかし不思議なことに、そういった話が2013年頃に出てきたものの、その後2018年頃にも似たような話が出てきている。これは想像だが、最初は一部の製品で高コストだが力業でどうにかしたものの、結局のところそれは現実的ではないという話になり、半導体プロセスが進歩してから現実的な実装方法を探ってチャレンジしたのではないかと思う。しかし、現実的な製造方法を考案したものの、全てのCMOS撮像素子に普及させるような機能ではないので、結局のところ一部の製品にしか採用されずにとどまっているのが現状だろうか。
このあたりは目下最大の謎である。

 

そしてLOGの普及に関しては、ピーク輝度を伸ばすだけならガンマ係数を上げればいいんじゃないか?くらいに思っていたが、よく考えるとハイライトしか恩恵を受けないしローライトが犠牲になる。
ハイライトが粘りまくるけどシャドーがベタベタにつぶれた映像なんて、誰も見たくない。だから、シャドーも粘るしハイライトも飛びにくいカーブを各社が考えているということだ。いいかげん、ある程度まとめて欲しいと思う程度には乱立している。

 


ちょっと長くなってきたので、各社の思想など現状についてのまとめは別の機会にしようと思う。また、ここまで書いてきてF35のことを思い出したりしたが、潮流からは外れた存在なので見なかったことにしようと思う。技術的にはいろいろと面白いところがあるのは確かだが。

 

それでは皆さん、ごきげんよう

茶軸 青軸 メカニカル

仕事が少し手薄になったときに、ふと思うことがある。(決して暇ではない。)


「お手頃なメカニカルキーボード探そうかな」


これを読んでいる方の何割かは、キーボードなど付いていないタブレットスマホの類だろう。そして、PCを使っている方でも、大多数はメンブレンパンタグラフのキーボードだと思う。

キーボードはキーボードでしょ?という反応があるだろう。
もっともだ。キーボードであることに変わりはない。

ただ、PCとのインターフェースの使い心地は能率に影響する。
メンタル的なやる気にも影響する。
そして、PC本体よりは長持ちする(本来であれば)
だから、インターフェースには少しだけこだわっている。

 

カニカルキーボードとは何か。

ひとことで言ってしまえば、「打つたびにカチャカチャいうやつ」である。細かいことはWikiにでも聞いてほしい。

うるさい。
そして(値段が)高い。
たかがキーボードに数万円とか、一般人からすれば狂気の沙汰だ。個人的にも数万は高いと思うが、でも1万円程度なら別に構わないと思う。

そんなわけで、1万円程度で買えるメカニカルキーボードが欲しくなるタイミングが時々ある。今使っているものが壊れたので、というわけではない。似たような使用感の物を予備として欲しくなるパターンである。

 

個人的に、メカニカルキーボードに求める要素は幾つかある。

・上述のとおり、1万円程度と安価であること。
・また、自分の打ち方でも打ち漏らしがないこと。
・キーが重すぎないこと。
・キーの感触が気持ち悪くないこと。

 

以前、秋葉原にキーボード専門店があった時は、店頭で何種類か試すことができたので非常に助かった。どこの系列だったっけ?と思って調べてみたら、クレバリーだった。
今はキーボード専門店どころかクレバリーそのものがなくなってしまったが、存命中は何かとお世話になりました。たしか、G400の白箱バルクを買ったのもクレバリーだったような気が。

 

話を戻そう。

値段に関しては、昨今のゲーミングデバイスブームで全体的に値上がりしてきている感はある。しかし、暗所作業でバックライトは実用的だが、必要以上にライトアップしてもらう必要は無い。そんなわけで、意外と1万円程度の選択肢というのは少ない。

 

値段を無視すれば、メカニカルキーボードとしては東プレの静電容量式の「RealForce」が有名だ。
たしかに反応は良いので打ち漏らしは発生しない。しかし、キーの重さや感触が個人的には合わなかった。やや、ストロークが長すぎるし、クリック感がないし、少し重たい感じがした。長時間使っていると妙な疲労感を感じる。
どれも、東プレが作りこんだ結果や原理的な問題なので、これは「not for me」なのだと思うことにした。

 

数少ない他の選択肢は、CHERRY社の茶軸や青軸といったスイッチを使ったキーボードだ。
黒とか白とか銀とか赤は試していない。しかし、一般的な茶軸は使っていて心地よい。打ち漏らしはほぼ発生しない。クリック感があるので、指がストロークに関係なく下まで押し込もうとすることがない。少し初動が重たい感じはするが、疲れた時でも許容できる程度なので問題ない。

 

では、茶軸ならどれでもいいのか?
これは当初考えてもいなかったが、メーカーによって出来不出来は異なる。同じ軸を使っていても、だ。

何年か使って摩耗が進むと、ものによってはキートップ押下時に擦れが発生してしまい、その摩擦感が指先に不快な刺激を与えるようになる。キートップとフレームのクリアランスが狭すぎるのか、軸の固定強度が不足しているのか、それは定かではない。ただ、数年でそうなるメーカーとならないメーカーがあるのは事実だ。

現在も同じかどうかは不明だが、最初に使っていたFILCOのマジェスタッチでは現象が発生した。使用頻度の高いキーで複数発生するようになったので、我慢できず買い換えた。

その後使っているDuckyChannel製のSHINEシリーズは、問題なく使い続けている。こちらは逆に、使用初期に僅かな擦れ感があるものの、使用と共に解消した。

残念なことに、最近の同製品レビューを見ていると、あまり評価はよろしくない。
しかし前世代はとうに終売しており、市場在庫も無い。
一応前世代を2台使っており、在庫も2台持っている。当分問題はないだろうが、これを使い終わったらまたキーボード探しの旅をしないといけないのかもしれない。全てがタッチパネル化することはないので、まぁ探すことになるのだろう。

 

ちなみに、実用性優先で買い物をしたので、まだ青軸のキーボードは所有していない。
しかし、あれは良い。絶対に良い。打鍵時の満足感が違う。だから、機会があれば趣味のキーボードとして青軸のキーボードは確保しておきたい。家族に怒られたら茶軸に戻せばよい。

 

なお、リモートワークが増えてきて感じたのは、「良くできたノートPCのキーボードは、下手なメンブレンより使いやすい。ただし10キーが無いことを除けば」だ。当初、余らせていたメンブレンキーボードを外付けして使っていたが、キートップの緩々な感触が嫌になり、結局使わなくなってしまった。あのキーボードはPC作るときの非常用扱いにしようと思う。

15インチクラスのノートなら10キーあるよ、という指摘にはこう答えたい。
「Enterの右隣にキーがあるのは論外」
だから、Enterキーの右側には何も置かれていないタイプのノートPCを選ぶ。

 

余談だが、マウスはボールマウスの頃から基本的にLogicoolだ。数年でスイッチがチャタリングを起こすのを覚悟して使っている。値段とバランスを考えたら、他に浮気する気が起きないのだ。PCによってワイヤレスだったり有線だったりするが、そのPCの用途で遅延が気にならなければワイヤレスでも良い(その方が便利)と思って選んでいる。普段使いのデスクトップは、レスポンス重視で有線だ。しかし線が邪魔だ。どうにかしてほしい。

無線でもレスポンスの良いマウスあるよ、という指摘にはこう答えたい。
「それ、右手用だろ」
悲しいかな、かなりの確率でマウスは左手で使っているのである。
昔は左手専用形状のマウスも出ていたが、今は終売。仕方なく左右対称のものを使っている。

 

長くなってしまったが、今日はこのへんで。

それでは皆さん、ごきげんよう

動画におけるRAWと422の使い分け

写真好きであればRAWという単語は知っているはず。大容量であるが幾らでも後処理できる魔法のファイルだ。
しかし、これが動画の世界では少し意味合いが変わってくる。個人的な不明点について調べたので、ここに記しておきたい。

 

仮に4000万画素のカメラの場合、14bitのRAWファイルは70MBである。カメラによっては圧縮処理をするが、それは横に置いておく。
動画であれば、4Kを想定した800万画素の場合、12bitのRAWファイルは30fppsだとして360MB/sである。
※ この計算は大雑把なのであしからず

静止画であれば 「記録媒体への書き込みが終わるまでお待ちください」 という話が通用するが、動画の場合は待ったなしである。そのため、安定した転送レートを稼がなければならない。
また、記録媒体も有限なので、品質が保たれるのであれば転送レートは低い方が良い。

そこで、早くからラージセンサーでの撮影環境を提供してきたRED社の製品は、1:3とか1:7のような圧縮を行っている。圧縮率から考えて、当然非可逆圧縮だ。更に、提供開始された時期を考えれば、ProResなどと同じDCTベースの圧縮を行っている(あまり高度な事はしていない)と思われる。
最大で13とか15分の1くらいまでの圧縮モードが用意されていたと思うが、こんなに圧縮して問題ないのか?と思う。DCTベースの圧縮技術はDVでも使われているが、これは圧縮率が1:5だったはずだ。
ただ、JPEGに置き換えて考えてみた場合、4000万画素の写真は10MBもあれば十分に高画質であろう。元は各色8bitで120MBもあるのだが。
そう考えると、RED社の考えていることもあながち間違ってはいない(現実的な落としどころとしては悪くない)と思われる。

そんなわけで、静止画ではRAW=限りなく非圧縮に近い(ほとんどロスレスに近い)巨大なファイルだが、動画ではRAW=ディベイヤーされていない比較的低圧縮な(殆どの場合でロスレスではない)ファイル、という認識になる。

 

なお、逆算した値なのでどこまで正確かは不明だが、同じRAWでも圧縮率は様々だ。
RED社のRAWは前述のとおり、圧縮率について多数のオプションがある。ただし、どこかに品質の閾値になるようなラインがあるかもしれないので、事前テストは必須だろう。
Cinema DNGは、基本的に非圧縮のようだ。
ProRes RAW HQは、およそ1:2
ProRes RAWは、およそ1:3
SONYの16bit Linear RAWは、およそ1:3.3

ちなみに、SONYの16bitというのは実質12bitか14bitだと思われる。撮像素子の動作速度を考えれば12bitが正解に近いように思える。しかしラチチュードを考えると14bitの可能性もある。F65搭載の2000万画素級のセンサーが15bitだったはずなので、その辺までは可能性としてありそうだが。
しかし、世界のSONY様でもRAWを圧縮しているというのは少し感慨深いものがある。自分だけだろうか。

 

さて、422記録で低圧縮なファイルと、似たようなビットレートのRAW記録があった場合、どちらが良いだろうか。
前者であれば、重たいディベイヤー処理をする必要がないので、後処理は楽だろう。
しかし、カメラ内のディベイヤー処理がどの程度の品質を持っているのか不明な場合(数百万レベルの機材でそれはないだろうが、過去に高級コンデジで明確な違いを確認したことがある)は、後で時間をかけてディベイヤー処理した方が良いかもしれない。
また、同じビットレートでも圧縮率が異なる事も考慮したい。4K10bit30fpsの場合、非圧縮の422は450MB/sであるが、非圧縮のRAWは300MB/sである。
また、422記録で12bitというフォーマットは存在しないはずだ。ProRes4444であれば12bitに対応しているが、ProRes422は10bitまで。
そのため、品質を優先するのであれば後者を選択するのがベターである。

 

また、422記録でも各社独自のフォーマットがあったりするので比較が難しい。
デファクトスタンダードはProRes422だと思っているが、圧縮処理がDCTベースなのもあり、今となっては設計が少々古い。
浮動小数点演算が必要になるため、デコード誤差が発生する。
これに対して、SONYが採用しているXAVCはH.264ベースの圧縮であり、16bit整数演算で済むのでデコード誤差は発生しない。
他、諸々の改善によって、4K10bit24fpsで240Mbpsという低ビットレートで済むという。
ProResLTでも届かないくらいなので、これについては後発の利が発揮されている。
素直にうらやましい。

 

余談だが、ProRes422収録だと1TBでも3時間くらいしか撮影できないよ!バックアップの容量厳しいよ!4TBのHDDでも足りないよ!と嘆いている人がいるが、これについては規格の古さという点で同情はする。
が、10TBのSSDを搭載したPCに40TBクラスのRAIDを複数繋げて使っていて感覚がマヒしているので、「4TBで足りなければ10TBとか14TBを買えばいいのに(マリーアントワネット風味)」と思う。

 


それでは皆さん、ごきげんよう

 

PS5のSSDの謎

謎と言うほど謎でもないのだが、PS5のSSDコントローラは12チャネルアクセスで、PCI Express 4.0対応のカスタム品であることは公表されている。
製造するのはどこだろうか。

 

現時点で世間に出回っているPCI Express 4.0対応のSSDコントローラーは、全てがPhison製の PS5016-E16 だ。そもそも、SSDコントローラーを作っている会社自体が少ないが、2社目については聞こえてこない。
可能性があるとすれば Marvell、Samsung、Silicon Motion、この辺りになるが、カスタムチップを作るだけのフットワークがあるだろうか。
何となくではあるが、既に製品としての実績を持ち、なおかつ10カ月でチップを完成させたPhisonが今回のカスタムチップも製造するように思える。

 

ただ、現状の PS5016-E16 についてはいろいろと苦しいところがある。
一つは発熱だ。
この理由は仕様を見るとすぐに分かる。PCI Express 3.0でも爆熱で知られていたPhisonだが、今回も当時と同じ28nmプロセスなのだ。
正直なところ「いつまで28nm使い回してんねん!」と思わずツッコミを入れてしまうレベルだ。
まぁ、コストの問題もあるし、純粋にTSMCのキャパが足りなかったのもあるだろうし、そもそも製造数も多いとは言えないだろうから、仕方ないところはあるのだろう。

もう一つ、苦しいところはコントローラーだ。
ARM R5 2core の構成とされている。他社では5coreのコントローラーを使っている例もある。コアそのものの規模やクロックの違いはあるだろうが、性能を考えるともう少し欲しいところだ。

このまま12ch化するのであれば全体的に1.5倍の規模に拡大することになるが、狭い筐体に押し込んだ上で安定動作させる必要があるゲーム機において、発熱の問題は低減しておきたいと考えるだろう。絶対的な発熱量はCPUやGPUに及ばないが、この辺のチップにアクティブヒートシンクを付けるのはコスト的にも故障リスク的にも避けたいはずだ。

20nmプロセスはあまり一般的ではないので、16ないしは14nmプロセスで製造することで緩和策を講じるのだろうか。
この辺りはSONYさんが「お金のことは気にせず、ドーンとやりたまへ」とでも仰るのだろうか、仰って欲しい、仰るに違いない。

 

そして、一番の謎を思い出した。
825GBという中途半端な容量である。
チップ内のスタック数などによっては、一見すると中途半端な数字になる事もある。しかし825をチャンネル数で割っても550Gbitである。何となく切りが良いように思えるが、我々はこれを切りが良いとは認めない。64や128や192や256といった数こそスッキリする数字なのである。
192Gbitx3=576Gbit というのが最も正解に近いように思うが、これについては結論が出そうにない。ただし、容量を減らしている要因になりそうなものは推測できる。

<代替領域の確保>
NANDが基板実装なので、ある程度の冗長性は欲しいと思われる。

<SLC動作モードの領域確保>
普通、SLC動作モードの領域も含めての容量を示すはずなので、ちょっと違うような気もするが、可能性はゼロではないと思う。
これと関連して、DRAMキャッシュレス構成になる可能性もあるかもしれない。ゲーム機の性格上、データーの読み出しがメインになると思われるからだ。DRAMの実装コストが性能に及ぼす影響を考えれば、悪くない選択肢だとは思う。

この辺り、実機が出てからの分解レポートを待つことにしたい。

 

 

それでは皆さん、ごきげんよう

FUJIFILM GFX100 から読み解く、高画素モデルでの動画撮影

まず、この記事を読んで欲しい。
https://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/1251329.html

 

冒頭の、5Dmk2登場以来の業界の流れについては、素直に「なるほどね」と思う。
あと、センサーサイズが肥大化しているのは、8Kへの対応で画素面積を確保するための策であると思われる。

 

さて、記事になっているGFX100だが、35㎜フルサイズを超えるサイズでの動画撮影ができる。
元々の撮像素子が1億画素を超えているので、どうやって駆動しているのか、どうやって処理しているのか、疑問に思った。

富士フィルムのサイトを確認すると、動画再生時でも横方向のクロップはなく、純粋に縦方向がマスクされただけである。
4KDCIとQFHDの差異を無視して考えれば、読み出している画素数は11648×6552であり、約7630万画素である。

RED社のMonstroが3540万画素を60fpsで駆動するのであれば、倍近い画素数を30fpsで駆動するのはおかしいことではない。
と考えられるのは、製品レベルが同じである場合だけだ。
値段も全く異なれば、製品のコンセプトも異なる。
そのため、全画素読み出しは絶対に行っていないと断言できる。

 

では、どのような落としどころなのか。

 

ヒントになるのは、製品発表時の「約5,050万画素分の情報量を用いたオーバーサンプリングによる入力」という発言だ。
この段階で、全画素読み出しでないことは裏付けられる。

しかし、どうやって間引いているのか。

素数の比率を見ると、1/1.51であり、2の平方根である1.41に近い。
完全な分数であれば、ラインスキップやサブサンプリングなどで完全に無視している画素が発生しているのだと判断できる。
しかし、割り切れない数字であり、なおかつ1.4~1.5くらいの値が絡んでいるのであれば、ビニングのような処理を行っていると推測できる。

よく見れば、「画素分の情報量」という表現であるので、「~相当」という意味合いで使っているのだろう。
したがって、「実際に読み出している画素数は5050万画素未満だが、他の画素は無視しているわけではなく情報をある程度使っています」ということだ。

 

次に、使っている撮像素子から情報を探ろう。

 

これは簡単で、裏面照射のラージセンサーを製造しているのはSONYだけだろう・・・と考えて製品情報を探したところ、「IMX461AQR」にたどり着いた。
位相差画素についての記述はないものの、この派生品と考えて良いだろう。

ただ残念なことに、「Please refer to the datasheet for binning/subsampling details of readout modes.」と書かれており、ビニングについての情報は得られなかった。
そのため、推測するしかないのだが、フル解像度で10.1fpsであれば、動画向けのアスペクトでは1.33倍の13.4fpsが可能だ。
2x2ビニングして画素数が1/4になっても、フレームレートは4倍にならず2倍にしかならないので、2x2ビニング時は26.8fpsとなる。
3x3ビニングであれば40.2fpsであり、30fpsの基準を満たす。

あとは、ADCのbit数を減らすことで高速化できるはずだが、10.1fpsというのは12bit時の値である。
ADCのオプションは11,12,14,16bitで、16bit時は2.7fpsであるとも書かれているので、11bitであれば倍速ではないとしても多少の高速化はできそうだ。

したがって、可能性があるとすれば
 ・2x2ビニングで11bit駆動
 ・3x3ビニング
このどちらかだろう。

ちなみに、11648×6552を半分にしても4Kを上回る解像度であるため、2x2ビニングであれば画質的な弊害は表面化しにくい。
しかし、3x3ビニングだと4Kはギリギリ足りるが、4KDCIだと僅かに拡大処理することになる。また、ビニングの弊害が露骨に確認できそうな気もする。

そのため、可能性が高いのは2x2で11bitだと思われる。
これなら、処理する実画素としては1907万画素となり、昨今の2400万画素モデルの動画撮影時(2025万画素)と処理すべきデーター量は同等となる。
あとは、ビニングによってどの程度の情報量が畳み込まれているかによって品質が変わってくるわけだが、5050万画素という発表情報や撮影結果から判断する限りでは、それなりに意味のある結果が得られているのだと思う。
撮像素子のサイズが顕著に表れるのはSN比だと思うが、ビニングにより平滑化されることはこの点でもメリットになる。

 

ということで、GFX100について少し考察してみた。
しかし、ビニングして、更に縮小処理して、折角色解像度が上がったのに記録するときは4:2:0や4:2:2である。
勿体ないとは思うが、静止画向けのカメラの宿命でもある。
4:4:4で記録したところで、一般向けにはオーバースペックなのだ。
逆に、4:4:4映像を欲しいがために縮小前提での設計をしてくる業務用カメラが無いわけではないだろうが、読み出し速度と解像度のバランスを考えると、可能性は結構低そうだ。

動画向けのカメラは、どうせ4:2:2までしか求められないのだからベイヤー配列で画素数ネイティブでOK、という割り切りの元に成り立っている。
もっとも、必要な撮像素子を設計・製造できることが前提でもあるので、ラージサイズセンサーを使う機器に関してはその部分のハードルが高い。
とはいえ、CCD全盛期であれば製造できるところが限られていたものの、今はそれに比べればハードルは下がっている。
その変化に乗じて登場してきたのがREDなどのメーカーだ。
タイミングを考えると、とても先見の明があるものだと感心する。

 

 

それでは皆さん、ごきげんよう